高級腕時計ブランド立ち上げでインフルエンサーマーケティングはどのように役立ったのか？

インフルエンサーマーケティングとは、企業や製品の宣伝を一人称として行うのではなく、第三者の言葉でその価値を伝える「仕組み」を持つことです。

その仕組みは、デジタルコミュニケーションやSNSが普及する以前から活用されていました。顧客やターゲットに親和性のあるキャラクターに代弁してもらう点では、コカ・コーラがサンタクロースを起用した広告や、タバコの「マールボロ・マン」のテレビコマーシャルもまた、インフルエンサーマーケティングとして位置付けることができるのです。

古代から続くインフルエンサーマーケティングについては、こちらの記事をご参照下さい。
https://news.infrect.com/history-of-influencer-marketing/

しかし今日のインフルエンサーマーケティングは、「SNSを活用した仕組み」にシフトしています。ここで一つの実例をご紹介しましょう。

ダニエル・ウェリントンが採用した新戦略

高級ファッションブランドや高級腕時計の広告の多くは、俳優や女優、ファッションモデル、社交界のスターなど、セレブリティを起用し、撮影だけでも多額の費用をかけるのが常でした。

2011年にスウェーデンで高級腕時計のブランドを立ち上げようとしていたフィリップ・タイサンダーも、当初はセレブリティを活用した広告戦略に取り組もうとしていました。しかしフィリップは、考えを変えることにしたのです。

新たな腕時計ブランド「ダニエル・ウェリントン」（Daniel Wellington）が訴求する顧客のターゲットは、若くてクリエイティブな人々。

そこに「リーチ」するセレブリティを選ぶのではなく、ターゲットとのつながり、「エンゲージメント」を重視した点が画期的でした。従来の広告宣伝とは異なる考え方を持ち込んだからです。

ユーザー生成コンテンツを活かす

セレブリティを起用し、膨大な広告費を一度に費やし、一気にターゲットの目に触れる「リーチ」を追い求めるのが従来のやり方でした。

一方ダニエル・ウェリントンは、同じ費用を継続的に活用しながら、インフルエンサーとの関係づくりと、その過程で生み出されていくユーザーが作り出すコンテンツ（UGC、User Generated Content）が増大していくことによって、ブランドとターゲット層との「エンゲージメント」を追い求めることにしたのです。

まずInstagramで、ブランドと親和性の深いマイクロインフルエンサーを選び、ダニエル・ウェリントンの腕時計をプレゼントしました。そして商品を紹介する写真を、#DanielWellingtonのハッシュタグとともに投稿するよう推奨したのです。

製品のデザイン性の高さ、信頼性、ファッション性などの訴求ポイントを、自社からの宣伝ではなく、ユーザーからの証言として、Instagram上のコンテンツを集めていきました。