株式会社大広 取締役執行役員でブランディングディレクター、鬼木美和さんの新著、『ファンを集められる会社だけが知っている 「ブランド人格」』が2024年3月13日に発売されます。
これに合わせて、鬼木美和さんとINFRECT代表、インフルエンサー総研所長の赤谷翔太郎による対談をお届けします。インフルエンサーマーケティングと企業、ブランドの未来についての議論に注目です。
第4回のテーマは「顧客価値」。マーケティングが関係性の強化へと変化する中で、顧客が感じる価値の在処は、どこへと移っていくのでしょうか。
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Contents
顧客価値のとらえ方は変わる
鬼木:顧客価値は、顧客に聞くべき
社会やメディア環境が変化していく中で、顧客やインフルエンサーを含めたステークホルダーとの関係性の強化が、マーケティングの新しい定義となりました。
そうした関係性の中において、顧客価値は、企業が決めるのではなく、顧客自身に尋ねるべきだと考えます。
単に商品やサービスから受けるメリット、支払った金額に対する対価としての価値ではなく、そこには企業や商品、サービスのブランドや、使っている顧客自身の満足度、信頼性、将来にわたる関係性の継続などが含まれていくからです。
しかし、顧客は自分でも気づいていないことが非常に多くあります。それを教えてくれる『誰か』の存在が必要になり、企業は、その代弁者たる『誰か』を見つけ出す必要があります。その『誰か』こそ、インフルエンサーなのではないか、と考えるのです。
赤谷:顧客を知る企業が、関係性を強化できる
たしかに、顧客自身は、深層心理まで気づいたり、言語化せずに、商品やサービスを使っていることが多いでしょう。そういった人が支持しているのが、言葉にしながら発信しているインフルエンサーということになります。
そのため、インフルエンサーは、自分のカテゴリ、例えばアウトドアや美容、ペットなどにおいて、情報発信力が高く、フォロワーが集まってくるのです。
インフルエンサーは、フォロワーとともに、自身も含めた顧客の課題やニーズについて、日々考えながら発信をしています。フォロワー数に価値があるのではなく、顧客の情報や思考、ニーズが集まることに、本質的な価値があるのです。
顧客のニーズを叶える世界観を持っている人がインフルエンサーであるならば、そのインフルエンサーと連携しながら、商品の開発や刷新、改善に役立てていくべきではないか、と考えるのです。
私はこういう人、と自己紹介しないと始まらない関係性
鬼木:つながりたければ、まず自己紹介
マーケティングの定義が、関係性の強化に移った点は、非常に現代的な変化と言えます。私とこの商品との関係はどうなのか、ということが問われているのです。
例えば誰かと初めて会って、仲良くなりたいと思ったとき、何をするでしょうか。まず、自己紹介をして、自分の顔と名前を知ってもらうところから始めるのがほとんどでしょう。
自己開示しないと、知ってもらえないし、好かれることもまずありません。
そのため、自分の人格、チームの人格、製品の人格、会社の人格を書いていき、表現し切れていない部分を発見し、そこをみんなで言語化することで、ブランド人格が出来上がり、自己紹介ができるようになるのです。
すぐに金銭的な価値に置き換えられるわけではありませんが、人的資本や知財も、企業価値に含まれるとすると、今後顧客との関係性も、企業にとって重要な価値になることは、間違いないでしょう。
(完)