コミュニティをコシューマーと一緒に共創する
コミュニティによるマーケティング
企業からの一方的なコミュニケーションに対して、ネガティブな印象が持たれるようになったことから、SNSで活躍するインフルエンサーを起用するインフルエンサーマーケティングとして、企業と消費者の間にいる第三者であるインフルエンサーの客観的な発信を、マーケティングに取り入れる動きが生まれました。
これまでご紹介してきたとおり、インフルエンサーが情報を発信していたとしても、企業のメッセージをそのまま伝えていたり、単に褒めるだけに終始していたりでは、消費者にとっても、インフルエンサーのファンであるフォロワーにとっても、「企業から言わされている」と言うことが伝わってしまい、ネガティブな印象を持たれてしまいます。
一方、ファンをコミュニティ化する動きも強まっています。クラフトビールを展開するヤッホーブルーイング(https://yohobrewing.com/)は、消費者の中からファンを可視化し、集め、コミュニティ化することに努めてきました。ファンとの交流イベントは、2010年に遡り、2018年には東京で5000人を集めたイベントも成功させています。
2023年8月には、軽井沢でホップの収穫イベントを開催し、これまでに参加者は5万5000人を超え、顔が見える形でのファンのコミュニティの形成を進めています。 (https://newsdig.tbs.co.jp/articles/sbc/637593)
企業が消費者と直接つながり、社員もファンとの交流を楽しむことで、企業と消費者の一体感を作り出す「コミュニティ化」のメリットを最大限に生かすことができている事例です。
ファンマーケティングとコミュニティ化の違いとは?
ヤッホーブルーイングのように、ファンをコミュニティ化して、社員共々楽しめる環境作りを進めることは、ブランド価値を高め、ロイヤル顧客を作り出すと考えられます。
しかしファンに向けてマーケティングを展開する場合、すでにブランドを認知した目したことがある既存顧客に対するマーケティングとなるため、新規顧客を獲得するためのマーケティング効果を生み出せないとして、企業が二の足を踏んでしまうこともあるのです。
そこで、ファンとともに作り上げる共創マーケティングが重要になります。
一般的なカスタマージャーニーは、 認知→興味→比較・検討→購入→再購入→好意・熱狂 という流れで進んでいきます。
ファンマーケティングの場合、このカスタマージャーニーにおいて、再購入と好意・熱狂に働きかけることになりますが、そもそもの新規顧客を獲得するための認知から購入までの流れを押さえることができない、と考えられています。
そこで、ファンとともに、認知から購入までの顧客体験を設計するマーケティング計画が必要となり、ファンに向けては、彼らが持っている価値、価値感、資産を明らかにすることで、「ファンになるにはどうすれば良いのか?」ということをコミュニティとして設計していくことが必要になります。
だからコシューマーが必要になる
そこで起用したいのが、企業の共創相手である「コシューマー」です。ロイヤル顧客であり、開発者やマーケティングの視点を持ち、クリエイティブで提案力があるインフルエンサー。
コミュニティを作っていく上で、最大のファンであるコシューマーを味方につけることで、コミュニティ化をより円滑に進めていくことを狙っていきます。
ブランドや製品に感じている価値、自らの体験を、コミュニティ形成の施策に活かす取り組みを進めていくことで、どうすれば認知してもらえるのか、どうすれば興味を持たれるのか、そのためにはどんなブランドや製品が必要になるのかを、一緒に設計していくのです。
コミュニティ化で最も大きく変わるのは、情報の出所です。
コミュニティ化を成功させると、情報の出発点は、これまでの企業ではなく、コミュニティになります。コミュニティのファンが新しいレシピを考えた、新しいアレンジを考えたという情報が出てきたり、コミュニティのトレンドがPRにつながったりします。
そのため、コシューマーは、コミュニティの中で、トレンドを見つけ出したり、新たに設定したりするリーダーのような役割を担うようになっていくのです。企業も、コミュニティリーダーたるコシューマーとの連携を密にしていくことで、良好なコミュニティ化を進めて行くことができるようになっていきます。