インフルエンサー総研(RIIM)を運営しているINFRECT(インフレクト)は、インフルエンサーから進化した、共創する消費者を指す「コシューマー」と共に作り上げる、次世代型の「対話共創マーケティング」を提唱しています。
この「対話共創マーケティング」について、INFRECT代表取締役で、インフルエンサー総研の所長である、赤谷翔太郎が解説します。
Contents
なぜコスパからタイパへ価値観が変化したのか?
プロダクトアウトによるアプローチに限界
2023年の時代において、これまでの企業活動、特にB2C分野での取り組みは、限界に来ていると見ています。
企業はこれまで、自社の技術やノウハウ、そして企業や開発者として「こうあるべき」というアイデアと思いを詰め込む形で製品を作り、これをマーケティングの工夫によって世の中に広め、売り上げを最大化するよう努めてきました。これを「プロダクトアウト」と呼んでいます。
現在プロダクトアウトで成功する企業は一握りに限られてきました。強力なユーザー基盤を世界中に抱えており、そのユーザーの声を聞く能力と、そのニーズを技術的・製造プロセス的に解決できる投資が可能な企業、つまりGAFAとそれに準じる企業に限られつつあります。
そのため、企業は、サブスクやD2Cといった新しいビジネスモデル導入、開発にデザイン思考やオープンイノベーション、共創モデルなどを取り入れ、製品やサービスの顧客に対する適応性を高めるなどの変化が必要となっています。
変化が起きた理由を象徴する「タイパ」という言葉
では、このような変化がなぜ起きたのでしょうか。その変化に気づくためには、価値観が変わっている点に注目する必要があります。
これまではコスパ、つまりコストパフォーマンスが重視されてきました。値段が高いか安いか、ハイブランドか否かに関わらず、価格に対して高い価値を発揮するものを選びたい、という考え方です。必ずしも安いものが一番良いというわけではなく、価格に見合う以上の価値があればそこにコストを出すという価値観です。
これに対して、現在注目されているのは「タイパ」。現在Z世代では先駆けて、タイムパフォーマンスが重視されるようになりました。時間に対する効率性や価値を最大化したい、という考え方です。パフォーマンスの尺度からコストが外れており、何かを効率化するためであれば、お金を出しても良いという考え方への変化となります。
そのため、コストパフォーマンスで重視されていた「所有」も重要度が薄れ、その結果として「シェアリングエコノミー」や「サブスクリプション」といった新しい消費のスタイルが、「タイパ」の価値観の中で広がるようになったのです。
人口減少社会の中で、タイパは世界の最重要価値観になる
このタイパは、今後、Z世代以外の世代にも大きく広がっていくことは確実です。なぜなら、日本をはじめとする先進国やアジア地域の国々では、今後顕著な「人口減少社会」が訪れるからです。
日本は2008年に1億2808万人という最大の人口を記録して以来、人口減少の一途を辿っています。移民を積極的に受け入れていない政策と、働く世代への負担が重たい税制や社会保障制度、進まない働き方改革を背景にして、出生率が低い状態が続いており、一貫して人口減少が続いているのが現状です。
そして、今後人口が増加に転じることは難しいと考えられています。残念ながら日本において、結婚や出産が、制度上、そして経済上、贅沢なこと、タイパの低いことと位置付けられてしまっているからです。
人口が減ることは、消費者も減りますが、それ以上のスピードで減少するのが働き手、サービスの担い手です。出生率が少なく、リタイア世代となる65歳以上の人口が30%を上回るようになり、働く世代は6割を下回るようになります。
問題は、現役世代の減少スピードが、全人口の減少スピードより、割合の面で早いことです。現役世代はタイパを上げていかなければ、現在の経済や社会活動を支えることが難しくなります。
つまり、Z世代だけでなく、全世代において「タイムパフォーマンス」「タイパ」は最重要課題となり、目指すべき最も大切な価値観となります。タイパが低いと、仕事も社会も回らなくなる。そんな世の中が目前に迫っているのです。
コシューマーとの「対話競争マーケティング」による問題解決
趣味趣向のマイクロ化とインフルエンサー
タイパ重視の価値観の中で、同時に一般消費者は、インターネットとモバイル、そしてSNSなどのメディアを通じて、情報を浴びるように消費していきます。
その中で、趣味趣向や興味関心が、非常にマイクロ化され、一人一人の情報欲求を満たすようになっているのが現在です。ニッチな趣味を持つ人を見つけて交流することもできますし、自分がニッチな分野の第一人者として情報を提供する側に回ることもできます。そうした中で、小・中規模の「インフルエンサー」が登場しているのが現在、と言えます。
インフルエンサーは、「誰よりも自分たちの関心がある領域に知見を持っている」として、消費者のフォローを集めている存在です。企業はこのインフルエンサーを有効活用していかない手はない、と考えています。
コシューマーとの対話共創
インフルエンサーマーケティングを新たな「対話競争マーケティング」へと引き上げるにあたり、INFRECT/インフルエンサー総研では新たな役割を示す名前「コシューマー」(Co-sumer / Collaborative consumer)と定義しました。
コシューマーは、一般消費者の趣味趣向・興味関心に誰よりも詳しい存在であるインフルエンサーと、企業が対話を繰り返しながら、マーケティングだけでなく、製品・サービスをともに創造する(共創)することによって、企業は消費者の声を素早く直接的に、事業に取り入れていくことが可能となります。
企業の本来持つ技術・ノウハウ・想いと、消費者の声を調和させていくことによって、事業開発を実現させることを狙っていく。これがコシューマーとの対話共創マーケティングとなるのです。
コシューマーとともにトライブマーケティングを実現する
コシューマーとの競合を通じて、顧客が求める商品やサービスを実現するために高い技術力を提供することで、これまでにない製品やサービスの実現と、インフルエンサーを代表とする既存顧客、さらには新たな顧客を取り入れていくことができるようになるでしょう。
その過程を通じて、インフルエンサーが持つ消費者に対する情報発信力、フォロワーの熱量が、企業へのフィードバックとして可視化されるようになっていきます。これをコミュニティとしてまとめていくことによって、ブランドに対して「顧客と対話すること」を価値として求めることができるようになり、次世代型の共創マーケティングを通じたブランドの成立へと歩んでいくことができます。
今後、こうしたコシューマーとの対話競争マーケティングに関する事例をご案内していきます。