企業の一方的な情報発信、広告が嫌われるようになってきた昨今、益々注目を集めているのがインフルエンサーマーケティングです。
しかし、企業にとっては、「どのようにしてインフルエンサーにお仕事をお願いすれば良いのかわからない」という声も聞かれます。また、依頼した後にどのように進めれば良いのかわからない、となかなかスタートを切れない方も多くいます。
そこで、この記事では、インフルエンサーマーケティングの出発点である「インフルエンサーの起用」方法や、その手順について、解説していきます。
さらに、インフルエンサーマーケティングに成功した事例や施策についてもご紹介します。
Contents
インフルエンサーに、お仕事を依頼する4つの方法!
インフルエンサーへの依頼は、インフルエンサーマーケティングの出発点になります。
現在は、下記の4つが主な依頼方法です。
インフルエンサーに直接依頼する
直接依頼とは、インフルエンサーのアカウントに対して、X(Twitter)やInstagramなどに用意されているダイレクトメール機能(DM)を利用する方法です。
最も手軽に見える化も知れませんが、コミュニケーションをゼロから取り始めなければならず、自分の企業やブランドの知名度や関連性の有無、インフルエンサーによるブランド認知など、様々な条件が重ならなければ、円滑にスタートを切ることが難しいとされています。
メリット
- 直接依頼できるため、低コストになる。
- 進める上での自由度が高くなる。
- 企業のイメージや企画のコンセプトに合ったインフルエンサーを起用しやすい。
- 親和性の高いマイクロインフルエンサーを見つけやすい。
デメリット
- 企業にマーケティングのノウハウや、インフルエンサー起用のための人材が求められる。
- プロ意識を持ち、パートナーになってくれるインフルエンサーを発見することが難しい。
- 関係値を作ることが難しく、関係作りに時間が多く取られる。
- コストは抑えられるが、トータルの金額感が分かりにくい。
依頼するときには、こんなDMを送ってみよう
活躍しているインフルエンサーに直接依頼する場合は、最初の連絡を誤ってしまうと、せっかくのチャンスをムダにしてしまい、インフルエンサーを起用できなくなってしまうこともあります。
知らないアカウントからの連絡に対しては、不信感を持って接することが多いため、簡潔に分かりやすく、連絡の目的と依頼内容について伝えると良いでしょう。
- 適切な宛名
- 簡単な挨拶文
- おおまかな依頼内容
- 企業情報
- 連絡先(携帯電話やメールなど)
インフルエンサーマッチングプラットフォームを利用する
インフルエンサーを探す際にまずあたってみたいのが、インフルエンサーマッチングプラットフォームです。様々なジャンルで活躍するインフルエンサーが登録されており、実績や信頼度、エンゲージメントなどの情報を参照しながら、起用を検討することができます。
メリット
- 積極的に活動しているインフルエンサーが登録され、お仕事を待っている状況であるため、比較的依頼を断られにくい。
- データに基づいた適切なインフルエンサーを起用でき、目的や効果を設計しやすい。
- 企業側が主体となって、インフルエンサーの起用やコミュニケーションの設計、マーケティングの分析などがおこなえる。
デメリット
- 企業側の自由度が高まる反面、企業側の負担が大きくなる傾向にある。
- 企業側にマーケティングやインフルエンサー起用の知識、ノウハウが必要。
- マーケティング部門の業務に対する負担が増える。
- マッチングプラットフォームを使用する際のシステム利用料などが発生する。
インフルエンサーの所属事務所に連絡する
活躍するインフルエンサーの中には、事務所に所属して活動している人も少なくありません。経験豊富なインフルエンサーを起用したい、大きなキャンペーンを行いたいという場合に活用したい方法です。
メリット
- 各プラットフォームで人気のある、コンテンツに定評があるインフルエンサーを起用することができる
- イベント出演や単発の動画企画など、SNS投稿以外のマーケティングでも、効果を期待することができる。
- 費用やスケジュールに合致するインフルエンサーを紹介してもらえる。
デメリット
- 知名度が高いインフルエンサーほど費用がかかる
- 人気のあるインフルエンサーは、希望するスケジュールや、競合他社の案件との兼ね合いで、起用できないことがある
- 所属事務所の意向が、キャンペーンやクリエイティブに反映され、企業側の自由度が薄れてしまう。
広告代理店に依頼する
インフルエンサーマーケティングを専門とする広告代理店を通して依頼する方法は、確実で効果的ににインフルエンサーマーケティングを実施する方法です。
企業に経験やノウハウ、人員のリソースがなくても始めることができ、自社内にノウハウを作るために活用することもオススメです。
メリット
- インフルエンサーとのトラブルの心配がない。
- 手間をかけずに費用対効果が高いインフルエンサーマーケティングがおこなえる。
- 企業内に知識や経験がなくても、始めることができる。
- 代理店の知見に基づくレベルの高い企画立案ができる。
- データ分析がしっかりしており、効果測定や次の施策に向けた戦略が立てやすい。
デメリット
- マーケティングのコストがかかってしまう。
- 業種、業態に応じて、実績のある代理店を見つける必要がある。
- インフルエンサーとの直接的な関係を構築しにくく、継続的な取り組みにしにくい。
インフルエンサーに依頼する前に確認するべきポイントは?
インフルエンサーマーケティングを成功させるためには、インフルエンサーの起用や施策で、明確なゴールを決めてから行うことが重要です。
インフルエンサーを起用する前に、まずは自社内で方針や施策について確認しておく必要があります。以下のようなポイントに注意しましょう。
起用するインフルエンサーは、マーケティング目標に適しているか?
インフルエンサーマーケティングによるPRでは、インフルエンサーを起用することによるブランド価値向上、企業の認知度向上、そして商品の購買促進など、1つもしくは複数の目標設定を行うことが重要です。
インフルエンサーが、自社のブランドや製品、サービスと親和性があるかどうか、またマーケティングやPRの目的を達成できるかどうかを見極めていく必要があります。
認知拡大であれば、フォロワー数が非常に多いメガインフルエンサーの起用が必要ですし、購買促進であれば、消費者との距離感が近いマイクロインフルエンサーを複数起用する施策が適しています。
自社のブランドや製品・サービスとイメージが合致しているインフルエンサーか
いくらフォロワー数が多くても、自社のブランドや製品との関連性がなかったり、相性が悪かったりする場合、そのインフルエンサーを起用すべきではありません。
相性が合わない場合、ブランド価値、商品イメージなどが低下したり、炎上や顧客離れといったネガティブな反応を作り出してしまいます。
またインフルエンサーのキャラクター、人柄も重要です。プロフィールやアイコン、投稿の文章や写真から、人物像をイメージできるかどうか、フォロワーとのコミュニケーションや返信などからみえる情報発信力、拡散力もチェックしましょう。
フォロワーは自然に集めたものか否か
インフルエンサーの中には、フォロワーを購入して、フォロワー数を水増ししている人もいます。こうした人には注意が必要で、インフルエンサーとして実態がない可能性があります。
そもそも、フォロワー買いはSNSにおける違反行為であることが多く、キャンペーンを一緒に行うと、企業やブランド、製品の信頼度を下げてしまう危険性もあります。
投稿への「いいね」の割合が1%〜2%未満の場合や、フォロー数に対してコメントの総数が著しく少ないといった、判断材料を目安に、見極めましょう。
投稿頻度が高いか
投稿頻度は、そのインフルエンサーの活性度合いを示しています。投稿頻度が少ないインフルエンサーは、フォロワー離れが起きている可能性があり、投稿の頻度と質について、きちんとチェックしましょう。
良質なエンゲージメントを得られているか
エンゲージメント率は、インフルエンサーの影響力、情報発信力、拡散力を表す指標となります。エンゲージメント率が高い、すなわち、インプレッションや「いいね」の数、コメントや返信の数、リポストの数などが多ければ多いほど、より多くの人に見てもらい、情報が広がる起点になっていることがわかります。
インフルエンサーに依頼したあとのマーケティングの進め方
インフルエンサーを起用してから、どのようにマーケティングを進めていくのか、見ていきましょう。
主に、企業側に主導権と自由度が大きな場合(直接依頼)と、外部の業者を活用して依頼した場合(マッチングプラットフォーム、事務所、代理店)に分けて、進め方をご紹介します。
インフルエンサーに直接依頼する場合
企業側が直接主体となってインフルエンサーマーケティングを行う場合、企業はインフルエンサーに直接連絡を取り、進めていきます。
以下が、その一般的な方法です。
インフルエンサーを探して分析する
マーケティングを検討しているSNSアカウントから、ハッシュタグやユーザー検索を行って、インフルエンサーを探します。
ここで、前述のインフルエンサーの見極め方、企業やブランド、製品との親和性をチェックします。
インフルエンサーマーケティングの企画を実行する前から、あらかじめ、気になるインフルエンサーをフォローするなど、関係作りを始めておくと、依頼の際にもスムーズかもしれません。
複数のインフルエンサーにアプローチする
自社で直接インフルエンサーとコンタクトを取る場合、SNSのダイレクトメール(DM)での連絡は根気のいる作業になるかもしれません。
広告代理店であっても、直接の連絡の際のインフルエンサーからの返信率は多くて5%程度にとどまると言われています。また返信が来たとしても、PR案件に参加してくれるかどうか、そのブランドや製品の案件を受け入れてくれるかどうかも確実ではありません。
そのため、理想的な1人のインフルエンサーに絞るのではなく、複数のインフルエンサーにアプローチをすることが大切です。
特に、フォロワー数が1000人〜5000人のナノインフルエンサー、10万人以下のマイクロインフルエンサーは、比較的返信率が高いとされています。複数の規模のインフルエンサーを組み合わせる施策作りも検討しましょう。
インフルエンサーと契約し、マーケティング内容を作成する
インフルエンサーに案件への参加の同意が取れたら、契約をし、マーケティングの制作に入っていきます。
Instagramのインサイトや、YouTubeアナリティクスなどの分析ツールの活用、その他SNSツールを駆使し、マーケティングの対象となる投稿のインプレッションやリーチの数、コメント数などの効果測定のデータ提供も、インフルエンサーの同意を得ておくと良いでしょう。
外部の業者を利用して依頼した場合
マッチングプラットフォームや事務所、広告代理店などの外部を経由して依頼する場合の手順は次のとおりです。
コミュニケーションのやり取りが増えるため、スケジュールに余裕を持って進めておくと良いでしょう。
起用したいインフルエンサーの条件を伝える
マッチングプラットフォームや事務所、代理店に対して、インフルエンサーマーケティングを行いたいブランドや製品の説明をし、どんなインフルエンサーを起用したいのかを伝えます。年齢、性別、人物やクリエイティブのイメージなどを明らかにする必要があります。
インフルエンサーによってマーケティング成功に大きく関わるため、自社のマーケティング目的やインフルエンサーのクリエイティブなどを精査したうえで代理店との擦り合わせを行うことが重要です。
条件に合ったインフルエンサーを決定する
マッチングプラットフォームや代理店は、企業側からの依頼を受けて、インフルエンサーを選定し、見積もりやマーケティング施策を提示します。
そのプランに、企業とインフルエンサーの双方がOKを出すと、契約のステップへ進みます。
代理店が制作したクリエイティブの確認をする
広告代理店を活用する場合、独自のノウハウやマネジメント力を軸に、費用対効果が高いマーケティング施策や広告の作成を通じて、PR投稿を行います。
クリエイティブの品質はもちろんですが、誇大広告や誤掲載の有無、各種法律や規制に反していないかを確認する必要があります。これは企業側でも責任を持って確認するようにしてください。
特にステマ防止のための景品表示法の運用変更などもあり、消費者の誤認や誤解に対して、厳しい目が向けられるようになりました。代理店も当然チェックは行いますが、発注する企業でも最新の注意を払うようにしましょう。
フォロワー単価とは?インフルエンサーにPRを依頼する報酬の決め方
インフルエンサーマーケティングを行う場合のコストはいくらになるのか、なかなか不透明だと感じている方、直接依頼したいがいくらぐらいを見積もれば良いのかわからない、という方も多くいらっしゃいます。
そこで、インフルエンサーへの依頼料の目安について、ご紹介したいと思います。
フォロワー単価は1〜3円
日本におけるインフルエンサーマーケティングの依頼料の単価は、1〜3円(2022年現在)となっています。
具体的な依頼料の目安は、以下のとおりです。
- 1万人未満のフォロワーを抱えるナノ・インフルエンサー:1フォロワーあたり1〜2円
- 10万人未満のマイクロフォロワーを抱えるマイクロ・インフルエンサー:1フォロワーあたり1〜2円
- 100万人未満のマクロフォロワーを抱えるマクロ・インフルエンサー:1フォロワーあたり2〜3円
- 100万人以上のメガフォロワーを抱えるメガ・インフルエンサー:1フォロワーあたり2〜3円
フォロワー数が多ければ多いほど、より多くの人たちへの拡散が行えます。また、マクロ、メガインフルエンサーの単価が高い理由は、そうした影響力のある人の投稿によって、後追いで投稿する他のインフルエンサーが現れる効果が期待できるためです。
インフルエンサー依頼料の計算方法
インフルエンサーに対する報酬の計算は、
- フォロワー数 × 単価
となります。
フォロワー数10万人、単価2円であれば、20万円が依頼料となります。
マーケティングコストと、目指したいリーチ数の目標(KPI)、インフルエンサーの特性(より消費者に身近なマイクロインフルエンサーの起用や、一挙にリーチを稼ぐためのメガインフルエンサー起用、など)に応じて、複数のインフルエンサーを組み合わせることもできます。
発信方法や企画に応じて変化する
また、投稿の内容やコンテンツによっても、相場は変化します。
例えばXやInstagramのように、写真とコメントのみの投稿であれば、多くの情報を伝達するには向かないため、依頼料の相場が低くなることが考えられます。
一方で、YouTube動画やライブ配信のように、時間をかけてじっくりとブランドや製品の訴求後行うことができ、購買に貢献すると判断できる場合は、依頼料がより高い単価で計算されることもあります。
インフルエンサーへの依頼以外の費用とは?
インフルエンサーマーケティングにおける費用は、インフルエンサーへ支払う依頼料が大半を占めますが、必ずしもそれだけに収まらない可能性があります。
どんな費用が発生するのか見ていきましょう。
マッチングプラットフォーム、事務所、代理店への費用
インフルエンサーを自社で発掘、契約まで漕ぎ着けるには、高いハードルがあります。そのため、マッチングプラットフォームや事務所、代理店を通じたインフルエンサーマーケティングの企画を進める企業が少なくありません。
ただしその際、インフルエンサーへの費用のほかに、プラットフォーム資料料や、事務所や広告代理店への手数料、制作管理費などのコストが発生することがあります。
また代理店の場合、広告やクリエイティブの制作を依頼すると、ディレクションの費用やデザイン費用なども発生します。企画段階から、どんなコストがかかるのか、あらかじめ相談しておくと良いでしょう。
ギフティング費用
PR投稿を依頼をする場合、PR対象となる商品を宣伝材料としてインフルエンサーへ提供します。そして実際に使用・体験してもらい、商品の魅力を自信のSNSで発信してもらうのが一般的です。
この商品代金や配送料は依頼主の負担になりますが、インフルエンサーの素直なレビューを発信できるため自然なPRが可能となります。
交通費、宿泊費など
インフルエンサーの強い訴求力を活用する方法の1つに、インフルエンサーが広告主が運営するイベントなどを訪れることで、実際に体験する様子を写真や動画で投稿する施策があります。
また地方自治体であれば、地元の観光地への旅行や店舗の利用、地域イベントへの参加などの案件もありますが、その際には移動と宿泊の費用がかかります。
人気のあるインフルエンサーは、一人ではなく、チームで制作に当たっている場合があります。その際、交通費や宿泊費などは、複数のスタッフ分負担する必要があるため、事前に確認が必要です。
まとめ
インフルエンサーマーケティングは非常に盛んになった一方で、企業によってはなかなか自社内にノウハウを有していない、なかなか実施に踏み切れない、といった悩みを抱えている企業も少なくありません。
今回、インフルエンサーの探し方、依頼の仕方、費用感についてご紹介してきました。これらを参考にしつつ、自社に合った方法でのインフルエンサー起用を検討してみてください。