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日本一接客態度の悪いレストランはなぜ映えるのか?

インフルエンサー総研では、SNSを賑わす様々な商品やマーケティングの「クリエイティブ」にフォーカスをあてたカテゴリをスタートします。

初回は、「日本一接客態度の悪いレストラン」をきっかけにした、バズる顧客体験の新機軸についてです。ここには、顧客体験だけではない、コミュニケーションにとって大切な要素を見出すことができます。

日本一接客態度の悪いレストランとは?

https://twitter.com/tktktkni/status/1672469905202110464

2023年6月に愛知県名古屋市中区にオープンした「the LAZY HOUSE」

the LAZY HOUSE 住所:愛知県名古屋市中川区好本町3-3-1 営業時間:18:30-23:00(毎週金・土・日のみ営業)

店員は敬語を使わず接客中でもスマホをいじり注文をお願いしても「何?(💢)」メニューを机の上にバサッと投げる。そして料理の名前も

「トリュフに縁のない可哀想なお前らの為のオープンサンド」 「タコのウインナーしか食べたことない奴に、美味しいソーセージを教えてやる」 「友達が1人もいないお前らの為に用意したマンゴーカプレーゼ(2人前)」

という有様。そして食べ終わるとお皿には……。

SNSのメッセージやコメントでも、態度の悪い返信があふれています。TikTokも6000万再生を突破しました。

「真逆」の「体験」

SNSでは、店員の接客の悪さや、顧客の態度の悪さが話題になることが多く、そうした体験への膨大な数の共感や、店員あるいは顧客への批判が集まる傾向にあります。

そもそも、日本は世界から見ても、接客の良さが話題になります。マクドナルドやスターバックスといった米国発のチェーン店も、サービス品質やおもてなしなどで本家を上回る別次元のチェーンに進化しており、日本のサービス水準、スタンダードの高さを物語ります。

そうした「当たり前」を真っ二つに裏切る形となったのが、the LAZY HOUSEの接客態度の悪さ。しかもそれがスタンダードになっている点で、常識の真逆をいっている点が話題になるきっかけだったのではないでしょうか。

加えて、その日本最悪の接客を「体験」できる点もまた、SNSでシェアされることを前提としたクリエイティブの組み立て方、と位置づけることができます。

誰が行っても悪態をつかれた、今日はこんなことを言われた、など自分自身もそこに行けば体験することができる点は、シェアされるショートビデオを見て楽しむだけでなく、友達同士でいってみよう、というきっかけを作り出します。

「真逆」の「体験」こそ、the LAZY HOUSEのクリエイティブのポイントになっているのではないでしょうか。

顧客と何を約束するか?

その一方で、悪態をつく店員を売りにするレストランのように、「逆」のクリエイティブを狙って、顧客からポジティブな反応が得られるか?という不安もあるかも知れません。

しかし、実はこのお店では、顧客との間で共通の前提の上での密なコミュニケーションを行うことに成功している、と見ることができます。

「日本一接客態度の悪い」という前提が、顧客との接点の起点にあることで、顧客も接客態度の悪さに対して期待を持ちます。だから、悪態が許され、またそれを楽しむ体験が成立しているのです。

そうした前提を合わせたコミュニケーションは、顧客接点に限らず、あらゆる場所で重要であるはずですが、どうしても「お互い分かっている」という前提を過信してしまいがちです。

例えば、上司が部下を飲み会に誘っても来てくれない、という話はよく聞きます。ではその会社や部署では、採用する際に、上司と飲み会に行きますよ、と伝えていたでしょうか?

部内のコミュニケーションで重要です、前提を敷いていなければ、いくら上司が期待してお膳立てしても、部下は飲み会への参加を重視してくれません。そもそも、飲み会が苦手な人は、そうした前提を伝えていれば、採用を辞退していたかも知れません。

前提を共有する事は、あらゆる場面でのコミュニケーションにとって重要であり、the LAZY HOUSEはそのメリットを最大限に活用して成立している、と見ることができるのです。